エピソード記憶とは
「単語や年号を何度覚えてもすぐ忘れてしまう」という悩みは、多くの受験生に共通しています。
一方で、初恋の相手に手紙を渡した瞬間や、家族旅行での出来事は、
特別に覚えようとしなくても記憶に残っているのではないでしょうか。
この違いを説明する概念が「エピソード記憶」です。
エピソード記憶とは、いつ・どこで・どんな気持ちで経験したかという情報を含んだ、
出来事そのものの記憶を指します。
カナダの心理学者エンデル・タルヴィング氏が1972年に提唱した記憶の分類で、
「意味記憶」と対比される形で説明されます。
- 初恋の相手に手紙を渡そうとして緊張したこと
- 友人とたわいもない会話で盛り上がったこと
- 家族旅行で旅館でくつろいだ時間を過ごしたこと
これらはすべてエピソード記憶にあたります。
こうした思い出をずっと覚えていられるのは、出来事と感情がセットで記憶されているためだと考えられています。
今回は、エピソード記憶を受験勉強の暗記に役立てる方法を紹介します。
意味記憶との違い
エピソード記憶を正しく理解するには、対になる「意味記憶」との違いを押さえておく必要があります。
意味記憶とは、言葉の意味や事実、公式や年号そのものといった、経験と切り離された知識の記憶です。
一方エピソード記憶は、その知識を学んだ場面や状況ごと覚えている記憶です。
「その言葉の意味は何か」と問われて答えられるのが意味記憶、「いつ・どこでそれを知ったか」
を思い出せるのがエピソード記憶、という違いがあります。
| 比較項目 | 意味記憶 | エピソード記憶 |
|---|---|---|
| 記憶の内容 | 言葉の意味・事実・公式 | 出来事・経験・状況 |
| 思い出すきっかけ | 「〇〇とは何か」という問い | 「いつ・どこで」という問い |
| 感情との結びつき | 比較的弱い | 強く結びつきやすい |
| 受験勉強での例 | 公式や単語の暗記そのもの | 解けなかった問題を解説してもらった場面の記憶 |
暗記科目の勉強は意味記憶が中心になりますが、覚えた場面や体験と結びつけることで、
エピソード記憶としての定着も期待できます。
また、覚えた直後だけでなく、1日後、1週間後というように間隔を空けて復習する方法も、
記憶の定着には効果的だとされています。
エピソード記憶による印象づけと、間隔を空けた反復を組み合わせることで、より忘れにくい記憶にしやすくなります。
エピソード記憶が忘れにくい理由
脳は、感情が結びついた出来事を、生き抜くために重要な情報だと判断しやすいとされています。
その結果、海馬が長期記憶として送り出す優先度が上がると考えられています。
逆に言えば、淡々と暗記しただけの情報は、長期記憶として定着しにくい傾向があります。
長期記憶に残りやすくなる感情の例
- 楽しい、面白いと感じた場面
- 嬉しい、達成感を得た場面
- 悔しい、悲しいと感じた場面
暗記の際にこうした感情を意識的に結びつけることが、定着率を高める工夫になります。
エピソード記憶を受験勉強に応用する方法
エピソード記憶の仕組みを理解したら、実際の暗記に応用してみましょう。
エピソード記憶を受験勉強に応用する方法
- 初めての体験と一緒に覚える
- 好きな音楽を聴きながら覚える
- 覚えた内容を人に話してみる
- 特定の場所や時間と結びつけて覚える
- 授業中の出来事と関連づけて覚える
初めての体験や好きな音楽と結びつけて覚える
覚えにくい知識は、「初めて」の体験と組み合わせると印象に残りやすくなります。
初めて自力で解けた応用問題や、初めて訪れた場所で学んだ内容などは、体験そのものが記憶の手がかりになります。
同様に、好きな音楽を聴きながら覚えた内容も、その曲を聴くだけで思い出すきっかけになることがあります。
覚えた内容を人に話してみる
エピソード記憶を作る手軽な方法の一つが、覚えた内容を誰かに話すことです。
「誰に、いつ、どこで話したか」「話したときにどんな反応だったか」
という状況ごと記憶されるため、暗記した内容が定着しやすくなります。
特定の場所や時間と結びつけて覚える
いつもと違う場所や時間帯で勉強することも、その内容自体をエピソードに変える効果があります。
普段は自室で勉強している内容を、あえて図書館やカフェで学び直してみるのも一つの方法です。
授業中の出来事と関連づけて覚える
授業中の雑談や、その日にあった出来事とセットで学んだ内容を覚えておくのも効果的です。
ノートの端に、先生の一言や印象に残った瞬間を書き添えておくと、後で見返したときに記憶が引き出されやすくなります。
こうした方法は、一人で黙々と暗記するだけでは再現しにくい工夫でもあります。
エピソード記憶を使うときの注意点
エピソード記憶は、一度の体験でも記憶に残りやすいという利点がありますが、
似たような体験を何度も繰り返すと、どの体験がどの知識と結びついていたか、
かえって混同しやすくなる面もあります。
たとえば、毎回同じ場所・同じ状況で同じ範囲を暗記していると、体験としての目新しさが薄れ、
記憶の手がかりになりにくくなります。
また、事実を大げさに作り替えてまで印象づけようとすると、
本来覚えるべき知識自体があいまいになる場合もあるため、
無理に劇的な物語を作る必要はありません。
エピソード記憶だけに頼らず、繰り返しの復習で意味記憶としても定着させることが、
長期的には必要になります。
よくある質問
Q. エピソード記憶だけで暗記科目は乗り切れる?
A. 難しい場合が多いです。最終的には繰り返しの復習によって、知識そのものを意味記憶として定着させる必要があります。エピソード記憶は、その定着を助ける入り口として活用するのがおすすめです。
Q. 感情を伴わない暗記は覚えにくい?
A. 覚えにくい傾向はありますが、覚えられないわけではありません。反復回数を増やす、語呂合わせを使うなど、別の記憶の仕組みを組み合わせることで対応できます。
My Self_Learnでは、授業内容の理解度を口頭試問で確認する機会を設けており、
覚えた内容を自分の言葉で説明する経験そのものが、エピソード記憶として定着しやすくなる仕組みになっています。
暗記が苦手で、覚えてもすぐ抜けてしまうと感じている方は、覚え方そのものを見直す機会として検討してみてください。
受験勉強の暗記に活用することができる場所法について詳しく知りたい方は、
こちらの記事もご覧ください。
記憶の仕組みについてもあわせて確認しておくと理解が深まります。
化学の暗記が苦手な方は、
化学の暗記のコツも、
参考になります。
また、せっかく覚えても忘れてしまうなら、
詳しく解説しています。
そのほか、覚えたことがすぐ抜けてしまう時は、
あわせてご覧ください。
さらに、すきま時間を暗記に使いたい場合は、
参考になるはずです。
物語やエピソードと結びつける記憶法は、
数学の公式を覚えるときにも応用できます。
公式を忘れにくくする具体的な覚え方は
まとめていますので、あわせてご覧ください。
物語と結びつけて覚える発想は、
世界史の年号を覚えるときにも役立ちます。
年号の具体的な覚え方は
世界史の年号の覚え方|理系受験生でも無理なく暗記できるコツで
解説していますので、あわせてご覧ください。
エピソード記憶とは?受験勉強の暗記に活かす仕組みとコツ:まとめ
エピソード記憶はたった一度の体験で記憶することができます。
ただ、同じ体験を何度も繰り返していくと識別が難しくなっていきます。
エピソード記憶で重要なのは、
情動が生じるような感情が入っている物語やストーリーになっているかです。
海馬が長期記憶にするかを決めるポイントには、
感情が入っている情報かどうかというものがあります。
エピソード記憶を活用する場合は、自分にだけ分かる内容で良いので、
物語を作り情動を生み出すことがポイントになります。
ぜひエピソード記憶を受験勉強に活用しましょう。




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