場所法とは
「単語や年号がなかなか覚えられない」
「覚えてもすぐ順番が分からなくなる」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
場所法(ばしょほう)とは、頭の中に思い浮かべた場所に、覚えたい情報を一つひとつ配置していく記憶術です。
英語では「memory palace(記憶の宮殿)」や「method of loci」とも呼ばれ、
古代ギリシャの時代から受け継がれてきたと伝えられる、歴史の長い記憶術の一つとして知られています。
やり方はシンプルで、自分がよく知っている場所(自宅の玄関からリビングまでの道順など)を思い浮かべ、
その道順上に覚えたい情報を順番に置いていきます。
あとは頭の中でその道順をたどるだけで、置いた情報を順番に思い出すことができます。
なぜ「場所の記憶」は忘れにくいのか
場所を覚える能力は、原始時代から人類に備わっている生存本能の一つだと考えられています。
自分がどこにいて、どうやって元の場所に戻れるかを覚えていなければ、
狩りや採集の途中で仲間とはぐれたときに、危険な環境の中で生き延びることが難しくなります。
つまり、場所の記憶は生死に関わる情報として扱われてきたため、
人間の脳の中でも特に忘れにくい記憶として保持される傾向があります。
場所法は、この「忘れにくい記憶」の仕組みを借りて、覚えたい情報を場所と結びつけて記憶する方法です。
場所の記憶メカニズムは脳科学でも裏付けられている
この場所の記憶に関わる脳の仕組みは、2014年のノーベル生理学・医学賞でも取り上げられました。
受賞したオキーフ博士らの研究では、自分がいる場所と周囲の位置関係を把握するための、
「場所細胞」などの空間認識に特化した脳細胞の存在が明らかにされています。
この研究によって、人間が場所や空間の情報を、視覚から得られる情報とは別の仕組みでも、
記憶していることが脳科学的に裏付けられました。
場所法は、こうした人間本来の空間認識の仕組みを利用した記憶術だといえます。
場所法の基本的なやり方
場所法は、次の4つのステップで実践します。順番に確認していきましょう。
- 【場所法の4つのステップ】
1.覚えたい情報を整理する:まず暗記する範囲を決め、覚える情報を一つのリストにまとめます。情報が多い場合は、10〜15個程度に区切ると扱いやすくなります。
2.情報を具体的なイメージに変換する:化学式や年号、英単語など抽象的な情報は、そのままでは覚えにくいため、絵として思い浮かべやすい具体的なイメージに置き換えます(変換法)。
3.自分がよく知っている「場所」と道順を決める:自宅や通学路など、目を閉じても順番に思い浮かべられる場所を選びます。玄関→廊下→リビング→キッチン→階段→自分の部屋、のように道順をあらかじめ固定しておきます。
4.道順上にイメージを一つずつ配置する:決めた道順の各地点に、ステップ2で作ったイメージを順番に置いていきます。「玄関に置いてある〇〇」のように、場所とイメージを結びつけて思い浮かべることがポイントです。
例えば自宅の間取りを使う場合、「玄関に置いた〇〇」「リビングのテーブルに置いた△△」のように、
普段見慣れた場所と結びつけると、思い出す手がかりが格段に増えます。
思い出すときは、頭の中でその道順を実際に歩くようにたどるだけです。
玄関から順番に部屋を巡っていく感覚で、配置したイメージを一つずつ確認していきます。
受験勉強の暗記に場所法を応用する
場所法は、受験勉強の中でも特に、覚える情報量が多い暗記科目との相性が良い方法です。
例えば化学であれば、周期表の元素の性質や、有機化合物の反応の順序など、
順番立てて覚える必要がある内容を、自宅の道順に沿って配置していくことができます。
「玄関に置いたナトリウムが水と激しく反応している」のように具体的な情景としてイメージすると、
変換法の練習にもなり、記憶に残りやすくなります。
日本史・世界史の年号や出来事の順番、英単語のまとまり(単元ごとの単語リスト)なども、
同じように場所と結びつけて覚えることができます。
ただし場所法は、情報を「思い出しやすくする」ための方法であり、
内容そのものを理解しているかどうかとは別の問題です。
入試で得点するためには、覚えた知識を使って問題を解けるところまで確認する必要があります。
場所法が向いている人・向いていない人
場所法にも向き・不向きがあります。取り入れる前に、両方の傾向を確認しておきましょう。
- 【場所法が向いている人】
- 覚える情報の量が多く、順番通りに思い出す必要がある(一問一答形式の暗記や、手順を覚える単元など)
- 頭の中で場所やイメージを思い浮かべるのが得意、または好きだと感じる
- 語呂合わせなど、他の暗記法だけでは覚えきれないと感じている
- 【無理に場所法にこだわらない方がよいケース】
- イメージを作る作業自体に時間がかかりすぎ、暗記の負担がかえって増えてしまう
- 覚える情報量が少なく、単純な反復学習で十分に間に合う
- 場所と情報を結びつける練習をする時間を確保しにくい
場所法は数ある暗記法の一つであり、すべての暗記に万能というわけではありません。
エピソードとして覚える方法や、忘却曲線をふまえた復習のタイミングなど、
他の暗記法と組み合わせて使うと効果を発揮しやすくなります。
場所法を実践するときのコツ
最後に、場所法を使うときに意識すると効果が高まりやすいポイントを紹介します。
- 【場所法を実践するときのコツ】
- 同じ道順を、複数の暗記内容で同時に使い回さない(情報が混ざる原因になります)
- できるだけ具体的で、少し大げさなくらいのイメージを作る(平凡なイメージより記憶に残りやすくなります)
- 一度配置して終わりにせず、時間を置いて何度か道順をたどり直す(繰り返し思い出すことで定着します)
- 慣れないうちは、5〜10個程度の少ない情報量から練習する
場所法は、覚えるための「土台」を作る技術です。
仕組みを理解して繰り返し練習すれば、暗記科目の学習効率を上げる選択肢の一つになります。
また、
エビングハウスの忘却曲線に基づく効率的な暗記法についても参考になりますので、
あわせてご覧ください。
【古代ギリシャから受け継がれる記憶術】受験勉強の暗記に活用することができる場所法についてわかりやすく説明してみた:まとめ
場所法はよくある暗記方法とは異なり、人間の生存本能という記憶の本質をベースにした方法です。
場所とイメージを結びつけるプロセスには慣れが必要なため、
まずは身近な場所と少ない情報量から試してみることをおすすめします。
場所法のようなテクニックは、覚えた知識を思い出しやすくする助けにはなりますが、
覚えた内容を入試問題で使えるかどうかは別の確認が必要です。
My Self_Learnでは、化学をはじめとした暗記科目についても、
授業で覚えた内容が実際に得点できる状態まで定着しているかを、確認テストで整理しています。
暗記のやり方だけでなく、覚えた知識を得点につなげる学習計画まで含めて相談したい方は、
下記の診断も参考にしてみてください。




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