「勉強はしているのに、気持ちがずっとモヤモヤする」「このまま受験に向かっていいのか分からない」ーー受験期にこうした言葉にできない感情を抱える人は多い。
焦りなのか不安なのか、自分でもよく分からないまま、苦しい気持ちだけが残ってしまうこともある。そんなときは、感情を無理に消そうとする前に、紙に書き出して整理するところから始めるとよい。
なぜ受験期は感情がモヤモヤしやすいのか
受験勉強は、今日やった分がすぐに成績という結果で返ってくるわけではない。努力と結果の間に時間差があるため「このままで本当に合格できるのか」という焦りが生まれやすく、模試の点数やSNSで見かける周りの様子と比べて、嫉妬や劣等感が入り混じった感情が生まれることもある。どちらも頑張りが足りないから生まれるのではなく、受験という仕組み自体が持つ特徴によるものだ。
こうした感情を放置すると、勉強への集中力が落ちたり、些細なことでイライラしやすくなったりする。感情そのものが悪いわけではなく、「名前をつけずに抱え込んでいること」が負担を大きくしている場合が多い。タイプごとの具体的な対処法は、後述の「タイプ別チェックリスト」でまとめて紹介する。
モヤモヤした感情を紙に書き出して整理する3ステップ
モヤモヤを整理するコツは、いきなり解決しようとせず、「書く→名づける→決める」の3段階に分けることだ。
ステップ1 5分だけ、頭の中をそのまま書き出す
ノートかメモ用紙を用意し、タイマーを5分セットする。きれいな文章にしようと意識せず、今感じていることをそのまま書き出す。誤字や矛盾は気にしなくてよい。感情を言葉にして外に出す作業そのものに意味がある。
テキサス大学のジェームズ・ペネベーカーが1986年に行った実験では、つらい出来事について4日間連続で1日15分書き出した学生は、当たり障りのないテーマについて書いた学生に比べて、その後の保健センターの利用回数が少なかったと報告されている。この研究を起点に書くことと心身の状態の関係を調べた実験が重ねられてきた(出典: Pennebaker, “Expressive Writing in Psychological Science,” 2018)。
ステップ2 感情に名前をつけて分類する
書き出した内容を読み返し、今の気持ちに近い言葉を1つ選んでラベルをつける。例えば「焦り」「比較による劣等感」「無力感」「罪悪感」など。正確に当てはまる言葉でなくても構わない。
UCLAのマシュー・リーバーマンらが2007年に発表した研究では、不快な感情を表す画像を見た人に、その感情を言葉でラベルづけしてもらうと、恐怖や不安に関わる脳の部位(扁桃体)の反応が、ラベルづけをしない場合に比べて弱まったことが報告されている(出典: UCLA Health, 2007)。感情に名前をつける行為そのものが、気持ちの高ぶりを落ち着かせる助けになりうるということだ。
ステップ3 「今日できる次の一歩」を1つだけ決める
最後に、今日中にできる具体的な行動を1つだけ書く。「英単語を10個復習する」のように小さく具体的にすることが重要だ。モヤモヤを一気に解消しようとせず、次の一歩だけ決めれば十分としておく。
モヤモヤのタイプ別チェックリストと対処法
書き出した感情のラベルによって、合う対処法は変わる。代表的な4タイプの特徴と対処のヒントをまとめた。
| タイプ | 書き出しによく出る言葉 | 対処のヒント |
|---|---|---|
| 焦りタイプ | 「このままで受からないかもしれない」 | 今週の学習計画を紙に書き出し、終わっていないタスクと終わったタスクを分けて見える化する。完璧主義で「全部できないと意味がない」と感じやすいので、1つでも終わったタスクがあれば印をつけて、進んだ分を意識的に認める。 |
| 比較タイプ | 特定の人の名前・「〇〇さんは」 | SNSや模試の点数を見る時間を1日1回・5分までと決めて、それ以外の時間はアプリを閉じておく。比較してしまった後は「自分の今日の勉強内容」だけをメモに書き出し、他人ではなく自分の進み方に意識を戻す。 |
| 無力感タイプ | 「どうせ無理」「意味がない」 | 「今日できたこと」だけを3つ書き出すリストに切り替える。できなかったことではなく、できたことに目を向ける習慣をつけることで、小さな前進を実感しやすくする。 |
| 罪悪感タイプ | 「怠けている」「自分はダメだ」 | 休む時間をあらかじめ予定表に書き込み、「決めた休憩」であることを自分に示す。休んだこと自体を責める代わりに、「予定通り休めた」と捉え直す。 |
書き出しがうまくいかないときのNG例とOK例
書き出しに慣れていないと、逆に気持ちが沈んでしまう書き方をしてしまうことがある。例を見ながら違いを確認しておきたい。
NG例: 「今日も全然勉強が進まなかった。自分はダメだ。このままだと落ちる」
自分を責める言葉だけで終わっており、モヤモヤがさらに強化されてしまう。
OK例: 「今日も進まなかった。たぶん焦りがある。次は1時間だけ机に向かう」
事実→感情のラベル→次の一歩、の順で書くと気持ちが整理されやすい。
ジャーナリング以外の方法との比較
書き出す以外にも、モヤモヤへの対処法はいくつかある。それぞれのメリット・デメリットを比較しておく。
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 紙に書き出す | 一人でいつでもできる、記録を見返せる | 書く習慣がないと最初は続けにくい |
| 友達・家族に話す | 気持ちが軽くなる、客観的な意見をもらえる | 相手の都合に左右されやすい |
| SNSに書く | 共感を得やすい | 不特定多数に見られ、比較のきっかけにもなる |
| 運動する | 気分転換になりやすいと言われている | 感情の原因そのものは整理されない |
モヤモヤが何日も続く・苦しいときの相談先
ここまで紹介した方法を試しても、2週間以上モヤモヤが続く、眠れない日が続く、食欲が落ちている、といった状態が重なるときは、一人で抱え込まず専門機関に相談することを検討してほしい。
学校のスクールカウンセラーや、心療内科・精神科といった専門機関には、受験期特有の悩みを相談できる場合がある。感情の整理には自分でできる範囲とできない範囲があり、専門家に話すことで初めて見える対処法もある。無理に一人で解決しようとしなくてよい。通っている塾や学校の先生にも、学習計画の相談と合わせて気持ちの波について話してみるとよいだろう。
勉強そのものに集中できないと感じるときの対処法はこちらの記事で状況別に詳しく解説している。また、不安で夜眠れないときの対処法はこちらの記事も参考になる。メンタルの保ち方を広く知りたい場合はこちらの記事もあわせて参考にしてほしい。
受験期のモヤモヤした感情が整理できないときの書き出し方|タイプ別の対処法と相談先:まとめ
受験期のモヤモヤは、頑張りが足りないからではなく、受験という仕組みと比較のしやすさから生まれやすい。
「5分書き出す→感情に名前をつける→次の一歩を1つ決める」の3ステップで、少しずつ整理していける。
書き出すときは自分を責める言葉で終えず、事実・感情・次の一歩の順で書くのがポイント。
2週間以上モヤモヤが続く、眠れない・食べられない日が続くときは、一人で抱えずスクールカウンセラーや医療機関にも相談してほしい。




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