「模試前になると、お腹が痛くなるほど不安になる」「合格できる気がしなくて、勉強に集中できない」ーーそんな自分を、ダメだと感じてしまうことはないだろうか。
実は、不安という感情は「何も望んでいない人」には生まれない。何かを本気で望んでいるからこそ、それを失う可能性を怖れて不安になる、という見方ができる。
この記事では、受験期に不安が強くなる心理的な仕組みと、不安を「望みの言葉」に言い換えて力に変える3ステップのワークを紹介する。合わせて、一人で抱え込まずに相談したほうがいいサインについても解説する。
受験期に不安が強くなるのはなぜか
受験は、結果が出るまでに時間がかかり、努力と成果が必ずしも一致しない。模試の判定や周囲の様子と自分を比べる機会も多く、不安を感じやすい時期だと言える。
さらに、睡眠不足や疲労が重なると、ネガティブな情報の方に意識が向きやすくなる、と指摘されている。もともと冷静に考えられる人でも、受験期特有の条件が重なることで、一時的に不安が強くなりやすい。
心理学の分野では、1908年に提唱された「ヤーキーズ・ドットソンの法則」という考え方が古くから知られている。緊張や不安が全くない状態よりも、適度にある状態の方がパフォーマンスが高まりやすく、逆に強すぎると低下しやすい、とされる。つまり不安は「ゼロにする」ことが目標なのではなく、「程よく付き合う」対象と捉えた方がよい、という視点だ。
不安は「望み」の裏返し、という考え方
「不合格が怖い」と感じるのは、裏返せば「合格したい」という望みが強いことの表れだ。何も望んでいなければ、それを失う不安は生まれない。
心理学の「評価理論(アプレイザル理論)」という考え方では、感情は出来事そのものから自動的に生まれるのではなく、その出来事を自分がどう評価するかによって生まれる、とされる。感情研究者フリーダ(Frijda)の指摘では、どの感情の背景にも、本人にとっての「関心(concern)」が関わっている、とされる。この考え方に沿うと、不安という感情が動く背景には、本人が大切にしている「望み」が関わっている、という捉え方ができる。
つまり不安の強さは、その対象への望みの強さを映す鏡のようなもの、という捉え方ができる。不安を「消すべき敵」として扱うのではなく、「自分が何を望んでいるかを教えてくれるサイン」として受け止め直すことで、気持ちの向き合い方が変わってくる。
ただし、これは不安を無理に前向きに解釈し直すためのテクニックではなく、あくまで本記事で提案する一つの捉え方だ。不安そのものを否定せず、その奥にある望みに目を向けるための視点として活用してほしい。
不安を望みの言葉に言い換える3ステップワーク
不安との向き合い方を扱う記事の多くは、「不安を受け止めよう」「不安は当たり前」といった心構えの提示で終わりがちだ。ここでは、実際に手を動かして言い換えられる、具体的な3つのステップとして紹介する。
ステップ1 不安を紙に書き出す
頭の中だけで不安と向き合うと、同じ考えがループしてしまいやすい。まずは紙やスマホのメモに、今感じている不安をそのまま書き出してみよう。
「E判定だったから無理だと思う」「周りはもっと進んでいる気がする」など、短い言葉でいくつ書いてもよい。
ステップ2 不安に名前をつける(ラベリング)
書き出した不安に対して、「私は今、不安を感じている」「私は今、焦りを感じている」のように、感情に名前をつけてみる。
UCLAの研究チームが2007年に行った実験では、感情を言葉にして名前をつけること(アフェクトラベリング)によって、不安や恐怖に関わる脳の部位(扁桃体)の活動が落ち着きやすくなる、と報告されている。効果の大きさには個人差があるとされているが、「感情を言葉にするだけでも、気持ちが整理されやすくなる」という裏付けの一つとして知っておくとよい。
ステップ3 望みの言葉に言い換える
最後に、その不安の裏にある「望み」を言葉にしてみる。下の表のように、不安の言葉と望みの言葉をセットで書き出すと、同じ出来事でも見え方が変わってくる。
| 不安の言葉 | 裏にある望みの言葉 |
|---|---|
| E判定だったから無理だと思う | 本気で合格したいと思っている |
| 周りはもっと進んでいる気がする | 自分も納得できる結果を出したい |
| 当日失敗したらどうしよう | これまでの努力を本番で出し切りたい |
言い換えた望みの言葉は、そのまま「今日やること」につなげやすい。例えば「本気で合格したいと思っている」なら、「今日は苦手な単元を1ページ分だけ解く」のように、今すぐ始められる小さな行動に落とし込める。
不安を抑え込むと、むしろ長引きやすい
不安を抑え込んだ場合
感じないようにフタをすると、同じ不安が形を変えて何度も浮かんできやすく、気づかないうちに集中力が削られてしまう。
望みの言葉に言い換えた場合
不安の奥にある望みに気づけると、「何をすればいいか」という具体的な行動に意識を向けやすくなる。
こんな症状が続くときは、一人で抱え込まないで
この記事で紹介した方法は、日常的な不安や緊張との向き合い方の一つであり、医学的な治療に代わるものではない。
次のような状態が2週間以上続く場合は、無理に自分一人で解決しようとせず、学校のスクールカウンセラーや、心療内科・精神科などの医療機関に相談してほしい。
- 眠れない夜が続いている、または眠りすぎてしまう
- 食欲がまったくない、または過食が続いている
- 「消えたい」「いなくなりたい」と思うことがある
これらは「甘え」や「気合いが足りない」ということではなく、心や体が休息を必要としているサインだ。一人で抱え込まず、周りの大人や専門機関に話してみてほしい。
Q. 不安がまったくないのは良いことですか?
A. 前述のヤーキーズ・ドットソンの法則の考え方に沿うと、不安や緊張が全くない状態は、むしろ集中力やモチベーションが保ちにくいとされている。不安を「ゼロにする」のではなく、「望みの言葉に言い換えて付き合う」くらいがちょうどいい、と捉えてみてほしい。
不安の裏にある望みに気づけても、「具体的に何から手をつければいいかわからない」と感じることもあるだろう。My Self_Learnでは、一人ひとりの状況に合わせた学習計画の相談だけでなく、受験期特有の気持ちの揺れについても、講師に話しながら整理していくサポートを行っている。一人で抱え込まずに、まずは話してみることから始めてみてほしい。
また、受験期の不安で眠れない夜が続いている場合は
具体的な対処法を紹介しているので、あわせて参考にしてほしい。
メンタルの保ち方そのものについて知りたい方は
参考になるので、ぜひ読んでみてほしい。
受験の不安は「望み」の裏返し?心理学で読み解く不安の正体と活かし方:まとめ
受験期の不安は、「何も望んでいない人」には生まれない。不安の強さは、合格への望みの強さを映す鏡のようなものだと捉えることができる。
不安を抑え込まず、書き出す→名前をつける→望みの言葉に言い換える、という3ステップで向き合うことで、不安を具体的な行動につなげやすくなる。
ただし、眠れない夜が続く、食欲がないなどの症状が2週間以上続く場合は、一人で抱え込まず、学校のカウンセラーや医療機関に相談してほしい。不安と上手に付き合いながら、本番までの日々を過ごしていこう。



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