模試が返ってくるたびに、判定の文字を見て気持ちが沈み、
その日の勉強がまったく手につかなくなる。
そんな経験がある受験生は少なくありません。
結論から言うと、判定に振り回されてしまうのは、意志や精神力が弱いからではありません。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、心理学には、
ストレスへの強さを説明する「首尾一貫感覚」という考え方があります。
この記事では、その考え方を模試の結果の受け止め方に置き換え、
判定に一喜一憂しない状態をどう作るかを具体的に整理します。
結論:模試の判定は「今の実力の証明書」ではありません
模試の判定は、その時点での合格可能性を機械的に示した数字にすぎません。
志望校までの距離そのものではなく、
「今どこに課題が残っているか」を教えてくれる中間報告だと捉え直すことが、
立て直しの出発点になります。
判定という結果だけを見て一喜一憂するのではなく、
判定が出た理由を分解して次の行動につなげる姿勢が、成績が伸びていく受験生に共通しています。
なぜ判定が出るたびに気持ちが崩れてしまうのか
模試の判定に強く動揺してしまう背景には、共通する3つの感覚の低下があります。
心理学の「首尾一貫感覚」という考え方は、この3つを整理する手がかりになります。
「この先どうなるか分からない」という不安
判定を見た瞬間、「このままでは志望校に届かないかもしれない」という漠然とした不安に襲われ、
何をどう挽回すればいいのか見通しが立たなくなることがあります。
これは、状況を理解し、ある程度先を見通せているという「把握可能感」が下がっている状態だと説明できます。
「対処できる気がしない」という無力感
課題は分かっていても、「今の自分にはどうにもできない」と感じて、
勉強に手がつかなくなることもあります。
これは、自分には対処するための手段があるという「処理可能感」が下がっている状態です。
「今のつらさに意味を感じられない」という虚しさ
「こんなにつらい思いをして意味があるのか」と感じてしまうときは、
努力に価値を見出す「有意味感」が下がっています。
この3つが同時に下がると、
模試の結果一つで受験勉強全体への意欲が崩れてしまうことがあります。
心理学の「首尾一貫感覚」という考え方
この3つの感覚をまとめて、
心理学では「首尾一貫感覚(Sense of Coherence)」と呼びます。
医療社会学者アーロン・アントノフスキー氏が提唱した考え方で、
強制収容所を経験しながらも心身の健康を保てた人々の研究から見出されたとされています。
ストレスの強さそのものではなく、ストレスをどう受け止め、
どう対処するかという「受け止め方の型」に注目した点に特徴があります。
把握可能感:状況を理解し、ある程度先を見通せる感覚
処理可能感:自分には対処する手段があるので「なんとかなる」と思える感覚有意味感:つらい経験にも取り組む意味を見出せる感覚
厳密な医学的診断のためのツールというより、
ストレスへの向き合い方を整理するための考え方として、ここでは紹介します。
模試の結果を「把握可能」にする振り返り方
把握可能感を取り戻す一番の近道は、判定という結果だけを見るのではなく、
失点の中身を分解して「何が起きたか」を具体的に把握することです。
得点を科目ごとに書き出す
まず、判定を見る前に、得点だけを科目ごとにノートへ書き出します。
感情を横に置いた状態で、数字とだけ向き合う時間を作ることが最初のステップです。
間違えた問題を4種類に仕分ける
次に、間違えた問題を「知識不足」「読み間違い」「時間不足」「ケアレスミス」の4種類に仕分けます。
原因がひとまとまりの「できなかった」ではなく、具体的な言葉になった時点で、
状況は把握しやすくなります。
次にやることを1つか2つに絞る
最後に、どの種類が一番多かったかを確認し、
次の模試までに手をつける優先順位を1つか2つに絞ります。
「このままではまずい」という漠然とした不安は、
こうして「あと何をどれだけやればいいか」という見通しに変わっていきます。
E判定からD判定を目指す場合も、C判定からA判定を目指す場合も、
この手順自体は変わりません。
「なんとかなる」と思える処理可能感の高め方
把握可能感だけでは、次の一歩は踏み出せません。
「対処する手段がある」と思える処理可能感が伴って初めて、行動に移せます。
処理可能感を高める最も確実な方法は、
小さくても構わないので「できた」という成功体験を積み重ねることだと言われています。
先ほど分解した課題のうち、今日中に終わる小さな1問、1単元から着手し、
「終わった」という事実を積み上げていきます。
もう一つ重要なのは、一人で抱え込まないことです。
処理可能感が低い人ほど、不振を自分だけで解決しようとして、
かえって身動きが取れなくなる傾向があると指摘されています。
学校の先生や塾の講師など、頼れる相手に間違えた問題を見せて相談すること自体が、
処理可能感を高める行動になります。
My Self_Learnでは、授業で理解したつもりの内容が本当に定着しているかを、
単元ごとの確認テストで確かめ、
その結果を次の学習計画に反映する仕組みを取り入れています(特に力を入れている化学では、テストゼミという形で定着確認を行っています)。
「分かったつもり」を「できた」という手応えに変えていく機会を科目を問わず定期的に持つことは、
処理可能感を積み上げる方法の一つです。
判定に振り回されない人がやっている有意味感の作り方
最後の要素である有意味感は、
目の前の勉強を志望校というゴールとどうつなげて捉えるかによって変わります。
模試の結果を「合否を決める採点」ではなく、
「志望校に近づくための情報」として位置づけ直すことが、有意味感を保つ第一歩です。
判定そのものを目的にすると一喜一憂しやすくなりますが、
「この模試で自分の課題が一つ分かった」と捉え直せば、
悪い結果も次につながる材料に変わります。
なぜその大学、その学部を目指しているのかを、
判定が悪かったタイミングであらためて書き出してみることも有効です。
目的を思い出す作業は、つらい今この瞬間に意味を与え直す作業でもあります。
それでも気持ちが沈んだままのとき
ここまでの整理を試しても気持ちの落ち込みが長く続き、
眠れない状態や食欲の低下が何日も続く場合は、一人で抱え込まないでください。
学校の先生やスクールカウンセラー、必要であれば医療機関に相談することを優先してください。
模試を受けたあとに何をすべきかを、
判定以外の視点も含めて広く知りたい方は大学受験の模試の活用法|受験前・受けている間・受けたあとにやるべきこともあわせてご覧ください。
また、模試や本番でプレッシャーに押しつぶされやすいと感じる方はプレッシャーに弱いと感じる人へ|課題を小さくする対策も参考になります。
Q. 判定が悪いと、もう合格できませんか。
A. 判定はその模試を受けた時点の目安であり、その後の学習状況によって大きく変わります。
判定そのものより、原因を分解して次にどう活かすかが重要です。
Q. 模試の結果はいつまで引きずってもいいですか。
A. 落ち込む時間を完全になくす必要はありません。
ただし、原因を紙に書き出す作業まで終えたら、
次の模試までの行動に意識を切り替えていくことをおすすめします。
模試の判定に一喜一憂してしまう人へ|「首尾一貫感覚」で立て直す3つの視点:まとめ
模試の判定に振り回されてしまうのは、意志の弱さではなく、
把握可能感・処理可能感・有意味感という3つの感覚が下がっているためだと考えられます。
失点を分解して状況を把握し、
小さな成功体験と頼れる相手を持って「なんとかなる」と思える材料を増やし、
判定を志望校に近づくための情報として捉え直すことが、次の模試までの立て直し方になります。




コメント