溶解度の計算問題を見た瞬間、公式は覚えているのに、
手が止まってしまう。そう感じている高校生は少なくありません。
結論から言うと、溶解度の計算でつまずく原因のほとんどは、
公式を忘れていることではなく、溶解度曲線の読み取り、
析出量(再結晶)の比例式、飽和溶液の濃度計算という、
3つのパターンのうち、どれを使えばよいかを見分けられていないことにあります。
この記事では、溶解度曲線の読み方から、温度変化による析出量の求め方、
水100g以外の条件への濃度換算まで、つまずきやすいポイントを整理して解説します。
溶解度とは何か(基礎の確認)
溶解度の計算に入る前に、まず定義を正確に確認しておきましょう。
ここがあいまいなまま公式を使うと、単位や条件を取り違えるミスにつながります。
溶解度とは、ある温度で溶媒(主に水)100gに溶かすことができる、
溶質の最大質量(g数)のことです。
この質量ちょうどまで溶質が溶けた状態を、飽和溶液と呼びます。
固体の溶解度は温度によって変化し、多くの物質では、
温度が高いほど溶解度が大きくなります。
ただし、この「水100gあたり」という条件を見落として、
水150gや飽和溶液100gの問題に、そのまま数値を当てはめてしまうミスが、
失点の大きな原因になっています。
また、水和物(結晶水を含む物質)の溶解度は、
結晶水を除いた無水物の質量で表される点にも注意が必要です。
溶解度曲線の読み方
溶解度と温度の関係をグラフにしたものが、溶解度曲線です。
まずは、このグラフから何が読み取れるのかを整理しておきましょう。
曲線から読み取れる3つの情報
溶解度曲線からは、主に次の3つの情報を読み取ることができます。
1つ目は、ある温度における溶解度そのもの(縦軸の値)です。
2つ目は、2つの温度における溶解度の差、
つまり温度を下げたときに、どれだけ溶質が溶けきれなくなるかです。
3つ目は、物質ごとの曲線の傾きの違いで、
温度による溶解度の変化のしやすさを表しています。
ミョウバン・硝酸カリウムの溶解度曲線を例に
教科書でよく使われる例が、硝酸カリウムとミョウバンです。
どちらも温度による溶解度の変化が大きく、
高温ではよく溶ける一方、温度が下がると溶解度が大きく下がります。
この性質のおかげで、温度を下げるだけで多くの結晶を析出させることができ、
再結晶の実験や計算問題の題材として取り上げられやすくなっています。
反対に、塩化ナトリウムのように温度による溶解度の変化が小さい物質は、
温度を下げても析出量があまり増えないため、冷却による再結晶には向きません。
| 物質の例 | 温度による溶解度の変化 | 冷却による再結晶 |
|---|---|---|
| 硝酸カリウム・ミョウバンなど | 大きい | 向いている |
| 塩化ナトリウムなど | 小さい | 向いていない |
析出量(再結晶)の計算方法
溶解度曲線を読めるようになったら、次は温度を下げたときに、
析出する結晶の量を求める計算に進みます。
比例式の立て方(質量保存の法則)
析出量の計算は、質量保存の法則にもとづいています。
溶媒(水)の量は、加熱・冷却しても変化しないため、
高温での溶解度と低温での溶解度の差が、水100gあたりの析出量に対応します。
水の量が100gでない場合は、比例式を立てて、
水の量に応じた析出量を求めます。
未知の析出量をxとおき、
「溶解度:水100g=析出量:実際の水の質量」のような比を使って立式すると、
条件が変わっても同じ手順で対応できます。
たとえば、60℃での溶解度が60、20℃での溶解度が20の物質があるとします。
60℃の飽和溶液150gを20℃まで冷やしたとき、
析出する結晶の質量を求めてみましょう。
60℃の飽和溶液150gには、水100gに対して溶質60gの比率で溶けているため、
水の質量は150×100/160=93.75g、溶質の質量は150×60/160=56.25gです。
この水93.75gに対して20℃の溶解度20を当てはめると、
20℃で溶けていられる溶質の質量は93.75×20/100=18.75gです。
析出量は、もとの溶質56.25gから、この18.75gを引いた37.5gになります。
結晶水(水和物)を含む問題でつまずくポイント
析出量の計算でもっとも間違えやすいのが、水和物の問題です。
水和物を水に溶かすと、水和物に含まれていた結晶水も、
溶媒の水の一部になります。
そのため、水和物の質量をそのまま溶質の質量として扱うと、
溶媒の量を見誤ってしまいます。
水和物の計算で確認すること
・水和物の質量を、無水物の質量と結晶水の質量に分ける
・結晶水の分だけ、溶媒の水が増えると考える
・無水物の質量で、溶解度の比例式を立てる
溶解度計算の3ステップ
1. 何を聞かれているか(曲線の読み取り/析出量/濃度)を確認する
2. 水の量が100gかどうかを確認し、比例式を立てる
3. 水和物が含まれる場合は、無水物と結晶水を分けて考える
飽和溶液の濃度計算
溶解度の値は、そのまま飽和溶液の質量パーセント濃度を求めるためにも使えます。
水100g以外の条件への換算に注意する
質量パーセント濃度は、「溶質の質量÷溶液の質量×100」で求めます。
飽和溶液の場合、溶質の質量が溶解度、溶媒の質量が100gにあたるため、
溶液の質量は「100+溶解度」になります。
ここまでは公式どおりですが、問題文の条件が、
「水150gに溶かした」や「飽和溶液100gに含まれる溶質の質量」など、
100gという基準からずれている場合に、
同じ比の関係を保ったまま数値だけを置き換えられず、失点するケースが多く見られます。
たとえば、20℃での溶解度が20の物質の飽和溶液を考えてみましょう。
質量パーセント濃度は、20÷(100+20)×100で求められ、約16.7%になります。
同じ物質を水150gに、同じ割合で溶かした飽和溶液で確認すると、
溶ける溶質は20×150/100=30gなので、溶液の質量は180g、
濃度は30÷180×100でも、同じ約16.7%になることが確認できます。
まず、溶解度の比をそのまま使える条件かどうかを確認する習慣をつけましょう。
共通テスト・入試で繰り返し出題される3パターン
ここまで見てきた内容は、共通テストや大学入試の化学でも、
繰り返し出題されるパターンです。
溶解度に関する問題は、大きく分けると、溶解度曲線の読み取り、
析出量(再結晶)の計算、飽和溶液の濃度計算という3つのパターンに整理できます。
どれも考え方自体はシンプルですが、
問題文の条件(温度、水の量、水和物かどうか)を正確に読み取れているかどうかで、
得点が大きく変わります。
溶解度の問題で得点できる人の特徴
・水の量が100gかどうかを毎回確認している
・水和物の化学式を見たら結晶水の有無をチェックする
・比例式を立ててから数値を当てはめている
溶解度の問題で失点しやすい人の特徴
・溶解度の数値をそのまま溶液の質量に当てはめてしまう
・水和物の質量を無水物の質量と同じものとして扱ってしまう
・公式を覚えることだけに時間を使い、条件の読み取りを練習していない
My Self_Learnの化学の授業でも、生徒がこの単元でつまずくときは、
公式を忘れているのではなく、
3つのパターンのどれに当てはまる問題なのかを、
見分けられていないケースがほとんどです。
Q&A
Q. 溶解度の値そのものを覚える必要はありますか?
A. 多くの入試問題では、問題文やグラフに溶解度の値が与えられます。値そのものを暗記するより、比例式の立て方と条件の見分け方を練習しておくことが優先です。
Q. 結晶水を含む物質の見分け方は?
A. 問題文の化学式に「・◯H2O」のような表記があれば水和物です。見かけたら、無水物の質量と結晶水の質量を分けて考える手順を思い出しましょう。
溶解度の計算でつまずきやすいのは、公式そのものより、
問題ごとの条件を整理する力です。
My Self_Learnでは、化学の授業に加えて、
単元ごとの理解度を確認するテストゼミを重視しており、
溶解度のように条件整理が得点を左右する単元も、
繰り返し演習しながら定着させています。
同塾では、こうした計算主体の単元を含めた化学対策を重ねた結果として、
2025年に医学部医学科への合格が4件ありました
(愛媛大学・大阪医科大学・関西医科大学・東京医科大学、成果には個人差があります)。
松山市で溶解度をはじめとする理論化学の計算に、
苦手意識がある方にとって、My Self_Learnは検討しやすい選択肢の一つです。
また、化学のグラフ問題全般の読み取り方を先に整理しておきたい方は、
化学のグラフ問題の読み方も参考になります。
物質量(mol)の計算に不安がある方は、
物質量の計算方法もあわせてご覧ください。
溶解度の計算方法|溶解度曲線の読み方と析出量・濃度計算のコツ:まとめ
溶解度の計算は、溶解度曲線の読み取り、析出量(再結晶)の比例式、
飽和溶液の濃度計算という3つのパターンに整理すると、見通しがよくなります。
どのパターンでも、水の量が100gかどうかと、
水和物が含まれているかどうかを最初に確認することが、
ミスを減らす近道です。
それでも一人での条件整理が難しいと感じる場合は、
化学の指導に力を入れている塾を活用することも、
選択肢の一つとして検討してみてください。




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