「模試の前は本気になれたのに、最近はどうも勉強に身が入らない」——そんなふうに感じたことはないでしょうか。
あるいは、「一つの教科を完璧にしようとするあまり、気づけば他の教科や生活のリズムが後回しになっていた」という経験がある人もいるかもしれません。
こうしたとき、多くの受験生は「自分の意志が弱いから」だと思い込みがちですが、
原因はそこではないことがあります。
この記事では、心理学で有名な「マズローの欲求5段階説」を正しく整理したうえで、
受験勉強のモチベーションが続かないときに役立つ「配分」という考え方を、
松山市の高校生・受験生・保護者に向けて紹介します。
お子さんの様子を見ている保護者の方にとっても、
「全部を完璧にしなくていい」と伝えるときの声かけのヒントになるはずです。
結論:モチベーションが続かないのは「積む思考」のせいかもしれない
結論から言うと、モチベーションが続かない原因の一つは、
「一つのことを完璧に仕上げてから次に進もう」とする、
いわば「積む思考」にあることがあります。
多くの人が知っている「マズローの欲求5段階説」も、
実は「下から一段ずつ完璧に積み上げる」ためのものではなく、
「複数の欲求を、同時にバランスよく満たす」ための考え方でした。
この視点を受験勉強にあてはめると、科目や生活のバランスを取りながら、
無理なく勉強を続けるためのヒントが見えてきます。
次の章では、なぜそう言えるのかを手短に確認したうえで、
今日から使える具体的な方法へ進みます。
なぜ「積む思考」でモチベーションが続かなくなるのか
まずは、多くの人が誤解している「マズローの欲求5段階説」の正しい中身から確認していきましょう。
マズローの欲求5段階説とは
心理学者アブラハム・マズローが1943年に発表した論文「A Theory of Human Motivation」で提唱した理論です。
人間の欲求を「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求(愛情・所属)」「承認の欲求」「自己実現の欲求」の5つに分類しました。
一般には、下の欲求が満たされてはじめて上の欲求が生まれるという、
ピラミッド型のイメージで語られることがほとんどです。
実は、あのピラミッド図はマズロー本人が描いたものではない
しかし、1943年の原論文にも、その後マズローが発表した論文にも、
ピラミッド図や三角形の図は登場しません。
現在広く知られているピラミッド型の図は、1960年代以降、
マズローの理論をビジネス向けにわかりやすく単純化する中で、
後の研究者たちによって作られたものだとする調査結果があります。
豆知識:ピラミッド図は「後から作られたイメージ」
「一段ずつ完璧に積み上げないと、次の段階に進めない」というイメージは、
マズロー本人の主張というより、後から広まった通俗的な理解に近いものです。
理論そのものと、有名な図のイメージは、必ずしも一致していません。
「積む思考」と「配分思考」、受験勉強への影響の違い
では、マズロー自身は欲求をどのようなものとして説明していたのでしょうか。
ここが、受験勉強のモチベーションを考えるうえで重要なポイントになります。
マズローが本当に示したのは「配分」という考え方
マズローは同じ論文の中で、人間の欲求は段階を一つずつクリアしていくものではなく、
どの欲求も同時に、それぞれ違う割合で満たされている状態が普通だと説明しています。
具体的には、平均的な人は生理的欲求が85%程度、安全の欲求が70%程度、
社会的欲求が50%程度、承認の欲求が40%程度、自己実現の欲求が10%程度満たされている、
という目安を示しました。
つまり「一つの欲求を100%満たしてから次へ」ではなく、
「複数の欲求が同時に、部分的に満たされているバランス」こそが、
本来伝えたかった状態だと考えられます。
「積む思考」が受験勉強を苦しくする理由
この考え方を受験勉強にあてはめると、見えてくることがあります。
「この教科を完璧にしてから次に進もう」「今日の範囲を100%理解しないと先に進めない」というように、
一つのことを完璧に積み上げようとする考え方を、ここでは「積む思考」と呼びます。
積む思考は、一つの科目や単元に力を注ぎすぎるあまり、他の科目や、
睡眠・生活リズムといった土台の部分を後回しにしてしまいがちです。
結果として、一部の成績は伸びても、生活全体のバランスが崩れ、
続かなくなってしまうことがあります。
| 積む思考 | 配分思考 | |
|---|---|---|
| 考え方 | 一つを完璧にしてから次へ進む | 複数の科目・生活を同時に、程よく配分する |
| 起きやすいこと | 得意科目への偏り、生活リズムの乱れ | 全体のバランスを保ちながら前進できる |
| 続きやすさ | 息切れしやすい | 無理なく続けやすい |
「配分思考」を受験勉強に落とし込む具体的な方法
ここからは、「配分思考」を受験勉強で実践するための、具体的な手順を紹介します。
科目・生活を軸に分解して優先度を決める
まず、今抱えている勉強や生活を、いくつかの軸に分けて書き出してみましょう。
「英単語の暗記」「数学の演習量」「睡眠時間」「部活との両立」「模試の復習」など、
思いつく範囲で構いません。
そのうえで、軸ごとに「今週、特に力を入れる部分」と「最低限でよい部分」を先に決めておきます。
たとえば化学が苦手な人であれば、
「基礎の抜け漏れをなくすことだけは100点を目指し、応用問題の演習量は今週は最低限でよい」と決めてしまう、といった具合です。
すべての軸に◎をつけようとしないことが、配分思考の出発点です。
実際にノートやスマホのメモに、次のように書き出してみましょう。
書き出し例(高3・化学が苦手な生徒の場合)
化学:基礎の抜け漏れ潰し(◎)/数学:今週は最低限、
既出問題の復習のみ(○)/睡眠:23時就寝を崩さない(◎)/部活:大会前なので今週は優先(◎)
1週間単位で配分を見直す
配分は、一度決めたら終わりではありません。
模試の結果や体調、学校行事などに合わせて、1週間に一度は見直す時間を作りましょう。
「先週は数学に配分を寄せすぎたので、今週は英語と睡眠を優先する」というように、
軸ごとの力の入れ具合を入れ替えていく感覚です。
配分思考を試すときの3つのチェック
- 今週、力を入れる部分と最低限でよい部分を先に決めているか
- 睡眠時間など生活の土台まで「最低限でよい部分」に含めて考えられているか
- 1週間に一度、配分を見直す時間を作っているか
それでもモチベーションが上がらないときの手順
配分思考を意識しても、それでもやる気が出ない日はあります。
そんなときに確認したいポイントを整理します。
モチベーションが下がるサインを見逃さない
「今日はやる気が出ない」という日が数日程度であれば、誰にでもあることです。
ただし、睡眠不足や食欲の変化が続く、何をしても楽しいと感じられない状態が長く続く場合は、
勉強法だけの問題ではない可能性があります。
そのようなサインが続くときは、一人で抱え込まず、学校の先生やスクールカウンセラー、
家族など身近な人に早めに相談することをおすすめします。
保護者の方は、お子さんの睡眠や食欲、表情の変化に比較的早く気づける立場にあります。
問い詰めるのではなく、変化に気づいたときに一声かける、
くらいの関わり方が助けになることがあります。
配分の優先順位に迷ったときは
どの科目に、どれくらい力を配分すべきかは、
模試の点数だけを見ていても意外と判断しづらいものです。
自分では「できている」と思っていた分野に、実は抜け漏れが残っていることもあります。
My Self_Learnでは、確認テストによって理解度を整理し、
その結果を一人ひとりの学習計画へ反映することで、
今どこに力を配分すべきかを一緒に整理しています。
「何を優先すればいいか自分では判断しにくい」と感じている方にとって、
検討しやすい選択肢の一つです。
また、目標設定そのものの立て方に興味がある方は、
目標設定とドーパミンの関係性についての記事も参考になります。
「頑張ること」自体が目的になってしまっていないか気になる方は、
受験勉強を頑張ることは手段であり目的ではない話もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. マズローの理論は古い学説で、もう使われていないのでは?
A. 現在の心理学では、欲求が段階的に生まれることを検証した研究は限定的で、
理論そのものに批判もあります。
ただし「人は複数の欲求を同時に抱えている」という視点は、
モチベーションの整理に役立つ考え方として、今でも参考にされています。
Q. 配分思考と「手を抜くこと」の違いは?
A. 配分思考は手を抜くこととは違います。
力を入れる部分を先に決めて計画的に配分する考え方であり、
「最低限でよい部分」も完全に無視するのではなく、崩れない程度には維持することが前提です。
マズローの欲求5段階説は「積む」でなく「配分」|受験勉強のモチベーションが続かない時に効く考え方:まとめ
モチベーションが続かないのは、意志の弱さではなく、
一つのことを完璧にしようとする「積む思考」が原因のことがあります。
マズローの欲求5段階説も、本来は「一段ずつ積み上げる」のではなく、複数の欲求を同時に、
バランスよく満たす「配分」の考え方でした。
科目や生活を軸に分解し、
「今週力を入れる部分」と「最低限でよい部分」を先に決め、1週間単位で見直す。
この配分思考を、ぜひ今週の勉強から試してみてください。
それでもつらさが続くときは、一人で抱え込まず、
身近な人や学習計画の相談先を頼ることも大切です。




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