「テスト前に必死に覚えたはずなのに、本番になると
思い出せない」「教科書を読んでも、内容がなかなか
頭に残らない」と感じたことはありませんか。
こうした悩みは、才能や集中力だけの問題ではありません。
認知心理学の「認知負荷理論」という考え方を知ると、原因と対策がはっきり見えてきます。
この記事では、認知負荷理論の基本と、受験勉強で
今日から使える具体的な整理の工夫を紹介します。
結論:覚えられないのは頭の良し悪しでなく、情報の「見せ方」の問題
結論から言うと、勉強しても頭に入らないと感じる原因の多くは、
脳の「ワーキングメモリ」に、一度に多くの情報を詰め込みすぎていることにあります。
情報の量そのものを減らすのではなく、情報の「整理の仕方」や
「見せ方」を工夫することで、同じ勉強時間でも理解と
記憶の効率を上げられる、というのが認知負荷理論の考え方です。
具体的には、情報をいくつかのまとまりに分ける「チャンク化」と、
新しい知識を既存の知識と結びつける「スキーマ」づくりが、負担を減らすための軸になります。
認知負荷とは何か
認知負荷とは、学習中に脳のワーキングメモリ(作業記憶)にかかる負担のことです。
オーストラリアの教育心理学者ジョン・スウェラー氏が、
1988年に提唱したとされる考え方です。
人が新しい情報を一時的に処理する場所であるワーキングメモリは、容量に限りがあります。
豆知識:ワーキングメモリの容量には諸説ある
一度に処理・保持できる情報のまとまり(チャンク)の数は、2001年にミズーリ大学のネルソン・コーワン氏が発表した論文で「4個程度」と報告されています。古くは1956年のミラー氏の研究で「7±2個程度」という数字も知られていますが、こちらは後の研究で上方修正しすぎだったのではという指摘もあります。数字に幅はあっても、容量が有限であること自体は共通して指摘されています。
3種類の認知負荷
認知負荷理論では、負荷を大きく3種類に分けて考えます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 内在性負荷 | 学習内容そのものが持つ難しさ |
| 外在性負荷 | 教材の見せ方・伝え方による無駄な負担 |
| 学習関連負荷 | 理解を深めるために必要な、望ましい負荷 |
このうち、減らすべきなのは外在性負荷です。
内在性負荷は内容の難しさそのものなので、単元を分ける
などの工夫で調整はできても、ゼロにはできません。
学習関連負荷は、理解を深めるために必要な負荷なので、
減らす対象ではなく、むしろ積極的に使いたい負荷です。
なぜ勉強しても頭に入らないのか
情報を整理せずそのまま覚えようとすると、頭の中に
「置き場所」がない状態で情報を扱うことになります。
初めて学ぶ分野の教科書を開くと、知らない用語や
知らない考え方が次々と出てきて、そのすべてを
一つずつ独立した情報として処理しなければなりません。
これは、内容そのものの難しさ(内在性負荷)に加えて、
整理されていない情報の見せ方による無駄な負担
(外在性負荷)まで同時にかかっている状態です。
科目をこまめに切り替えながら勉強したり、色分けも
構造もないノートを見返したりすることも、外在性負荷を増やす行動にあたります。
一方で、覚えた内容を自分の言葉で説明し直したり、
既存の知識と比較したりする行動は、学習関連負荷にあたり、理解を深めるために必要な負荷です。
「頭に入らない」と感じるときは、この望ましくない負荷
(外在性負荷)がかかりすぎている可能性があります。
自分の勉強法を見分ける判断基準
自分の勉強のやり方が、どの負荷を増やしているのか、次の基準で振り返ってみてください。
減らしたほうがよい状態(外在性負荷)
- 教科書に線を引いて満足し、自分の言葉で書き直していない
- 教科書とノートと問題集を同時に開いて視線を行き来させている
- 新しい単元でいきなり難しい応用問題から始めている
そのまま続けてよい状態(学習関連負荷)
- 覚えた内容を人に説明しようとしている
- 似ている単元同士の共通点や違いを比較している
- 問題を解いたあと、なぜその解き方になるかを考えている
保護者の方は、お子さんが上のような状態(外在性負荷が高い状態)に
あてはまっていないか、勉強しているノートや教材を
一緒にのぞいてみるだけでも気づけることがあります。
認知負荷を減らす具体的な勉強法
外在性負荷を減らすための工夫は、特別な道具を使わなくても
今日のノート作りから試せるものばかりです。ここでは4つの方法を紹介します。
4つ前後の「チャンク」に分けて整理する
覚える情報を、4つ前後のまとまり(チャンク)に
分けてから整理すると、ワーキングメモリの負担が減ります。
たとえば、化学の反応の仕組みを覚えるときは、
「何と何が反応するか」「何ができるか」「反応の条件」
「間違えやすい注意点」のように、あらかじめ4つの
枠を決めてノートに整理する方法があります。
枠が決まっていると、新しい単元でも同じ形で情報を
入れていけるため、覚える作業そのものが単純になります。
暗記科目以外でも応用できます。英文法であれば、
「基本の形」「意味」「よく使う場面」「例外」のように
4つの枠で整理すると、新しい文法事項が出てくるたびに
同じ枠へ当てはめて覚えられます。
新しい単元に入る前に、全体像を先に見る
新しい情報は、頭の中に「置き場所」がすでにあると、負担が小さくなります。
この置き場所を、心理学では「スキーマ」と呼びます。
細かい内容を覚える前に、まず単元の目次や章立てを
ざっと確認し、「この単元は大きく何種類に分かれるのか」
「前の単元とどうつながるのか」を先につかんでおきます。
粗い地図があるだけで、そのあとに入ってくる細かい
情報を「どこに置くか」が分かりやすくなります。
解き方を先に見てから、自力で解く
新しい問題の型を学ぶときは、いきなり自力で解こうとせず、
解答例を一度丁寧に読んでから、似た問題を自力で解くという順番にします。
先に正しい手順を見ておくことで、慣れない解き方を
その場で組み立てる負担を減らせるという考え方で、
認知負荷理論では「例題効果(ワークドエグザンプル効果)」として紹介されることがあります。
図・表・説明はできるだけ近くにまとめる
グラフや図と、それを説明する文章が離れた場所にあると、
視線を行き来させる分だけ余計な負担がかかります。
ノートやまとめプリントを作るときは、図・表・説明文を
できるだけ近くに配置するだけでも、外在性負荷を減らすことにつながります。
自分で改善する場合の手順
ここまでの工夫を、勉強の流れに沿って整理すると、次の5ステップになります。
今日から試せる5ステップ
- 新しい単元は、細部より先に目次・章立てで全体像をつかむ
- 覚える情報を4つ前後の枠に分けてノートを作る
- 新しい問題の型は、解答例を先に読んでから自力で解く
- 図・表・説明を離して書かず、近くにまとめる
- 覚えた内容を、自分の言葉で説明し直してみる
これらは特別な道具を必要としない工夫ばかりですが、
普段の勉強に一つずつ足していくだけでも、
ワーキングメモリの負担は変わってきます。
一方で、「4つの枠にどう分ければよいか自分では
判断しづらい」「覚えたつもりでも、本当に使える状態に
なっているか自分では確認しにくい」という悩みは、
一人で解決するのが難しい部分でもあります。
My Self_Learnでは、確認テストによって理解度を整理し、
その結果を学習計画へ反映することを学習管理の特徴としています。
単元ごとの情報を自分なりに整理したつもりでも、それが
実際にテストで使える状態になっているかは、自分だけでは判断しづらいものです。
定期的な確認テストで理解度を可視化しながら、
整理の仕方そのものを見直していくことで、
認知負荷を減らす工夫を、より成果につなげやすくなります。
情報を受け止める土台であるワーキングメモリそのものを
鍛える方法を知りたい方は、ワーキングメモリを鍛える方法|受験の勉強効率を上げるコツも
あわせて読むと、負荷を「減らす」側面と「鍛える」側面の両方から対策できます。
また、暗記した内容を自分の言葉で説明し直すことは、
人に教えると覚えられる?プロテジェ効果を受験勉強に使う3ステップで
紹介している「学習関連負荷」を増やす行動そのものです。
反対に、科目をこまめに切り替える勉強は外在性負荷を
増やしやすく、勉強中に科目を頻繁に切り替えると非効率な理由も
あわせて読むと、整理の仕方と集中力の両面から対策できます。
化学の用語や金属イオンの色のように暗記量が多い分野で
チャンク化を試したい方は、
金属イオンの沈殿の覚え方も、整理の実例として参考になります。
勉強しても頭に入らないのは認知負荷のせい?ワーキングメモリの負担を減らす勉強法:まとめ
この記事のポイント
- 覚えられないのは才能の差ではなく、ワーキングメモリへの負荷の差
- 減らすべきは外在性負荷、活かすべきは学習関連負荷
- 4つ前後のチャンク化・全体像の先取り・解答例を先に読む、が有効
- 整理した内容が本当に使えるかは、確認テストで可視化するのが近道
勉強しても頭に入らないと感じるのは、意志や集中力が
足りないからではなく、ワーキングメモリにかかる負荷の
種類と量を意識できていないだけかもしれません。
まずは、覚える情報を4つ前後の枠に分けることと、
新しい単元の全体像を先につかむことから試してみてください。
それでも整理の仕方や理解度の把握に迷う場合は、
確認テストを通じて見直せる環境を頼るのも一つの方法です。
よくある質問
Q. 認知負荷理論は、暗記が多い科目にも使えますか?
A. 使えます。むしろ、覚える量が多い科目ほど、チャンク化や全体像の先取りによる負担軽減の効果を感じやすい傾向があります。
Q. どの科目から試せばよいですか?
A. 決まりはありません。まずは今つまずいている単元、あるいは暗記量が多いと感じている科目から、4つ前後の枠でノートを作り直すところから試してみてください。



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