溶解度積の問題で、電離式をどう立てればいいのか分からなくなったり、べき乗の数を間違えて答えが合わなくなったりすることはありませんか。さらに共通イオン効果が絡んだ途中から、急に解き方が分からなくなる人も多いテーマです。
溶解度積の計算は、電離式の立て方・Ksp式の作り方・未知数の置き方・単位の確認という4つのステップに分けて考えると、パターンが限られていることが分かります。
この記事では、溶解度積の基本的な考え方から、具体的な計算例、共通イオン効果が関わる場合の計算、沈殿生成の判定への応用、そして計算でミスしやすいポイントをチェックリスト形式で整理します。
溶解度積とは何か、計算前に確認したいこと
計算の手順に入る前に、溶解度積がどんな値なのかを整理しておきます。
溶解度積(Ksp)の定義
難溶性の塩AaBbが水に溶けてAaBb(固) ⇄ aAn+ + bBm-という溶解平衡の状態にあるとき、溶解度積Kspは Ksp = [An+]a[Bm-]b という式で表されます。温度が一定であれば、Kspはその物質に固有の一定値になります。
たとえば塩化銀AgClはAgCl(固) ⇄ Ag+ + Cl–という平衡にあり、Ksp = [Ag+][Cl–]となります。
溶解度と溶解度積の違い
溶解度は「物質がどれだけ溶けるか」をg/100gやmol/Lなどで表した値です。一方の溶解度積は、電離した後のイオン濃度の積という点が違います。
溶解度積の値から溶解度(x)を逆算する、という方向で問題が出ることが多いため、この2つを混同しないことが最初のポイントです。
溶解度積の計算を4ステップで整理する
溶解度積の計算問題は、次の4ステップで考えると整理しやすくなります。
ポイント:溶解度積計算の4ステップ
①電離式を書く ②Ksp式を立てる ③溶解度をxで置く ④代入して計算し単位と有効数字を確認する
ステップ1: 電離式を書く
まず、対象の物質がどのイオンに電離するかを化学式で書きます。ここで価数(1価・2価など)を正しく確認しておくことが、後のステップでべき乗を間違えないための土台になります。
ステップ2: Ksp式を立てる(べき指数に注意)
電離式の係数が、Ksp式ではそのままべき指数になります。たとえばPbCl2 ⇄ Pb2+ + 2Cl–なら、Ksp = [Pb2+][Cl–]2のように、Cl–の指数が2になる点を忘れないようにします。
ステップ3: 溶解度をxなどの文字で置く
水に溶ける量(溶解度)をxとおき、電離式の係数に合わせて各イオンの濃度をxの式で表します。PbCl2であれば、Pb2+がx、Cl–が2xになる、という対応です。
ステップ4: 代入して計算し、単位と有効数字を確認する
Ksp式にxの式を代入して方程式を解き、最後に単位(mol/Lなど)と有効数字が問題の指示と合っているかを確認します。この最終確認を省略すると、計算自体は合っていても答えが不正解になることがあります。
計算例で確認する溶解度積(AgClとPbCl2)
実際の数値を使って、1価イオンどうしの場合と、2価イオンを含む場合の計算を比較してみます。
1価イオンの例: AgClの溶解度積
AgClの溶解度積は、25℃でKsp = 1.8×10-10(mol/L)2という値が広く使われています(文献により1.77×10-10とする場合もあります)。水への溶解度をxとすると、Ksp = [Ag+][Cl–] = x・x = x2なので、x = √Ksp = √(1.8×10-10) ≈ 1.3×10-5 mol/Lと計算できます。
2価イオンを含む例: PbCl2の溶解度積
PbCl2の溶解度積は、文献によってKsp = 1.7×10-5(mol/L)3という値がよく使われます(問題集によって別の値が指定されている場合は、その値を優先してください)。PbCl2 ⇄ Pb2+ + 2Cl–なので、溶解度をxとすると、Ksp = [Pb2+][Cl–]2 = x(2x)2 = 4x3という式になります。4x3 = 1.7×10-5を解くと、x3 ≈ 4.25×10-6、x ≈ 1.6×10-2 mol/Lとなり、AgClの場合よりも1段階計算が複雑になります。
| 物質 | 電離式 | Ksp式 | xとの関係 | xの値(近似) |
|---|---|---|---|---|
| AgCl | Ag+ + Cl– | [Ag+][Cl–] | x・x = x2 | 1.3×10-5 mol/L |
| PbCl2 | Pb2+ + 2Cl– | [Pb2+][Cl–]2 | x(2x)2 = 4x3 | 1.6×10-2 mol/L |
表のように、イオンの価数と電離式の係数によって、xの式の形が変わる点を意識して計算することが重要です。
共通イオン効果が関わる計算パターン
溶解度積の計算では、共通イオン効果が関わる問題もよく出題されます。
共通イオン効果とは
共通イオン効果とは、難溶性の塩をそのイオンと同じ種類のイオンを含む水溶液に溶かすと、純水に溶かすときより溶解度が小さくなる現象です。たとえばPbCl2を0.10mol/LのHCl水溶液に溶かす場合は、もともとCl–が存在する分、Pb2+が溶け出せる量が少なくなります。
共通イオンがある場合の計算のコツ
共通イオンの濃度が、溶け出す量(x)より十分に大きい場合は、[Cl–]を共通イオンの濃度(0.10mol/Lなど)で近似してよいことがあります。
補足
近似が使えるのは、溶け出す量(x)が共通イオンの濃度に対して無視できるほど小さい場合です。問題文に「近似してよい」等の指示があるか、計算後にxが共通イオン濃度より十分小さいかを確認しましょう。
実際に計算すると、[Cl–] ≈ 0.10mol/Lと近似してKsp = [Pb2+][Cl–]2に代入し、1.7×10-5 = [Pb2+]×(0.10)2を解くと、[Pb2+] ≈ 1.7×10-3 mol/Lとなります。純水に溶かした場合の溶解度(約1.6×10-2 mol/L)と比べると、共通イオン効果によって溶解度が1桁近く小さくなっていることが分かります。このときx(1.7×10-3 mol/L)は共通イオン濃度0.10mol/Lに対して十分小さいため、近似は妥当だったと確認できます。こうした近似を使うことで、3次式などの複雑な方程式を解かずに済む場合があります。
沈殿生成の判定にKspを使う
溶解度積は、「混ぜたときに沈殿が生じるかどうか」を判定する場面でも使われます。
イオン濃度の積とKspを比較する
2種類の水溶液を混ぜたときのイオン濃度の積を[A][B]とすると、[A][B] > Kspであれば沈殿が生じ、[A][B] < Kspであれば沈殿は生じません。[A][B] = Kspのときは、ちょうど飽和した状態(平衡状態)になります。
判定でよくある計算の流れ
手順は、①混合後の各イオンのモル濃度を求める、②その積を計算する、③Kspと比較する、という3段階です。混合によって体積が増える場合は、モル濃度の計算で希釈を忘れないように注意します。
計算でミスしやすいポイントとチェックリスト
チェックリスト
□ 電離式の係数をKsp式のべき指数に正しく反映したか
□ 2価・3価イオンの係数を2乗・3乗し忘れていないか
□ 混合後の体積変化(希釈)をモル濃度計算に反映したか
□ 共通イオン効果の近似を使ってよい条件か確認したか
□ 最終的な単位(mol/Lなど)と有効数字が問題の指示と合っているか
上記のうち、特に多いミスは「べき指数を忘れる」ことと、「混合後の希釈を考慮しない」ことの2つです。計算練習の際は、答えを出した後に電離式に戻って指数を見直す習慣をつけておくと、ミスを減らせます。
このような化学の計算パターンを一人で整理するのが難しいと感じる場合は、上記のチェックリストを使って自分の答案を見直すことに加えて、My Self_Learnの化学指導のように、電離式の立て方から有効数字の確認まで一つずつ手順を確認しながら進められる環境を活用するのも一つの方法です。
溶解度積と合わせて、溶解度そのものの計算方法や
溶解度曲線の読み方を確認したい場合は、溶解度の計算方法を解説したこちらの記事も
基礎固めの参考になります。
溶解度積の計算方法を4ステップで解説|公式と計算例:まとめ
溶解度積の計算は、電離式を書く、Ksp式を立てる、溶解度をxで置く、代入して単位と有効数字を確認するという4ステップに分けると整理しやすくなります。AgClのような1価イオンの組み合わせと、PbCl2のような2価イオンを含む組み合わせでは、べき指数の扱いが変わる点に注意しましょう。
共通イオン効果が関わる問題では、近似が使える条件を確認し、沈殿生成の判定ではイオン濃度の積とKspの大小を比較する、という考え方を押さえておけば、出題パターンの多くに対応できます。



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